所在のない鈴子と俺。映画『百万円と苦虫女』を観た。
どこに行っても所在がなくて、いっそ自分のことを知っている人が一人も居ない中で暮らしてみたいと思ったことは無いですか?知らない土地にいって、勿論最初は誰も私のことしらないんですけどだんだん知られてきて、そうすると面倒なことにまきこまれて百万円あれば家も借りれて次のバイトが見つかるまでのつなぎになって、だから百万円ためて転々としてるんです。
あるある、あるある、ありすぎる。というか今まさにそう。
生まれた土地を離れて、誰も知らない土地に来て、もう5年以上がたってしまった。どうして生まれた土地をはなれたのか。それは家が、街が息苦しくて窒息しそうだったからだ。どこを歩いても知っている人、風景、だけどどこにも自分の居場所はないと感じていた。よく知っているのに所在のなさを感じ、そこに居るだけで苦しかった。
そして生まれた土地を出て、誰も知らない土地へ。そして五年が立つ。結局所在はなかった。しがらみだらけになり、もう何もかも面倒で、そして今またどこかに消えてしまいたい衝動にかられている。そんな俺にはとてもタイムリーな映画。
鈴子は中島との恋愛を経験し成長する。
映画の終盤、下のような鈴子から鈴子の弟たくやへの手紙を鈴子自身がモノローグするシーン。
たくやへいままで手紙出せなくてごめん。ねえちゃんは元気に生きてます。姉ちゃんは自分のことをもっと強い人間だと思っていました。でもそうじゃありませんでした。家族でも、恋人でも長く一緒にいられるコツって一番大事なことはいわでいることなんじゃないかなって思ってました。おとなしく、適当に愛想笑いしていらトラブルなく過ごせるとおもってました。いつの間にか何も言えない関係になってしまうのは不幸なことです。人は出会ったら必ず別れるのだと思います。その別れが怖いからねえちゃんは無理をしていました。でも、出会うために別れるのだと今気づきました。好きな人とお別れしたってちっとも泣くようなことじゃないって思いました。お姉ちゃんに言われたって説得力思いますが、たくやは悪くないよ、たくやはえらいよ、本当にえらいよ姉ちゃんはいろんな人から逃げて来ましたが、こんどこそ、次の街で、ちゃんと自分の足で立って生きていこうと思います。たくやに勇気づけられました、ありがとう。鈴子
きっといつか鈴子は自分の居場所、所在をみつけるだろう。
じゃあ俺はどうか。俺はこの鈴子の言葉に感動こそするが、「だがしかし・・・・」と思ってしまう。
はやくこの土地を去りたいという俺の思いは一向に消えないのであった。
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