Argo fuck yourself ~映画『アルゴ』を観た。

アルゴブルーレイ&DVD (2枚組)(初回限定版) [Blu-ray]

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 ベン・アフレック監督、主演。ベン・アフレックを観るのは『カンパニーメン』以来か。これはイランアメリカ大使館人質事件の際の実話を元に作られた映画で、結末は見る前からわかっていたものの非常に緊迫した展開と俳優陣の熱演でとても面白く観ることができた。
 
 映画のロケハンと称してイランに潜入し、6人のアメリカ人外交官を救出する作戦のために、CIA職員トニー・メンデス(ベン・アフレック)はロサンゼルスまで飛び、大物映画監督、特殊メイクアップアーティストの協力を得て、SF映画「Argo」をでっち上げてしまう。でっち上げとはいってもイラン側に本物と思い込ませるため、俳優を雇い、架空の事務所を借り、メディアに取材をさせたりする。勿論世間はことの真相などしらない。知るのはCIA職員と協力者の映画監督、メイクアップアーティストのみ。
 
 気になるのは肝心のArgoの脚本の中身なんだが、これは中東を舞台にしたでっちあげのSF映画。特殊メイクされた俳優たちによる脚本の読み合わせパーティなどを観ても、そのB級映画っぷりは凄まじい。しかし監督やメイクアップアーティストは、外交官を救うかも知れないこの映画に、愛情をこめて「Argo fuck yoursefl」という。この言葉を吐いたあとのニヤッとした表情が格好良くてたまらなかった。そしてその言葉を受けて同じように「Argo fuck yourself」と吐くベン・アフレックの顔も決意に満ちた表情をしていて素晴らしかった。
 
 この救出作戦は、紆余曲折あるものの史実が語るように成功して幕を閉じる。しかしこの作戦の成功もトニー・メンデスの名誉もクリントン大統領の時代まで明かされることはなかった。映画ラスト手前のシーン。CIAからの最高の勲章を授与されると同時に、秘密保持のためにすぐさま取り上げられるということを知って少し不満気な顔をするトニー・メンデス。そんな彼に対して彼の上司は「拍手が欲しければサーカスで働け」と投げかける。その言葉にニヤっとするトニー。このシーンのやりとりに名よりも実をとる男らの誇りが伺うことができ、俺は非常にしびれた。
 
 映画を観た感じ少しCIAを英雄視し、イランを悪者にしすぎてる感はあった。なんとなく。ただ(当時を知らない俺としては憶測でしかない)冷戦まっただ中の当時のアメリカの雰囲気がそんなもんだったと予想すると、そこんところも映画は良く再現しているということになんのかな。映画としてはとても良くできていて、アカデミー賞作品賞をとったのも納得。