フラメンコ的情熱の果てに~映画『Vengo』を観た。

ベンゴ [DVD]

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 血に縛られ生きる男の話。これは特別な世界の話じゃない。 誰もが、誰かに産まれさせられ、血に縛られる。覚えていても、覚えていなくても、俺たちは、血に縛られる。どんな時でも。愛されたという記憶が、愛されなかったという記憶が、俺たちを苦しめるのだ。  
 
 難しい話じゃない。どんな人間にも親がいる。そんな当たり前の事が時に悲劇を生んだりする。それは自分の力ではどうしようもないこと。親は選べない。それを偶然と呼ぼうが、運命と呼ぼうが変りはない。親の責任を子が負う。そしてまたその子の責任はさらにその子供が負う。理不尽だといっても仕方がないのだ。
 
 カコは復讐の連鎖を一人断ち切ろうと苦闘する。兄が犯した罪の責任をその息子が追ってしまわないように。復讐は無意味だと説く。だけどそんな彼の必死の説得も無駄に終わってしまう。結局死を持って贖うしか無い。
 
 この復讐の物語がフラメンコの音楽にのって展開する映画『Vengo』主役をはるカコ役のアントニオ・カナーレスは現代フラメンコ界のトップに君臨するお人らしい。フラメンコか・・・俺には無縁な世界だと思っていたが・・・これが案外・・・いけてしまう。
 
 最近ずっと放浪に関する本を読んだり、映画を観ていて、ふとジプシーという人たちのことが気になった。この映画もそのジプシーたちの話。この映画の監督はトニー・ガトリフ。他の作品もなかなかおもしろそうだ。