遠くのあなた

 映画『ペタル ダンス』 を観てからというもの、過去の友人たちのことが頭から離れない。これまでの貧しい人付き合いのことが、もう長く会わなくなり疎遠になってしまった人のことが頭から離れない。
 
 俺はこれまでの人生において人間関係というものを一つ一つ大切に積み上げてきた記憶がない。 小学校の友人たち、中学の部活仲間、遊び友達、高校、大学時代の冴えない友人たち。その場、その場ではなんとくそれなりな付き合いはしてきたと思う。 だけど、その場を卒業するとまるでそれまでの付き合いなどなかったかのように急激に疎遠になってしまう。
 
 連絡を取っていないから生きているか死んでいるかもわからない。正直なところ、どうでもいいという思いが半分ある。
  
 中にはこちらのことを気にかけてくれる友人もいた。はっきりとお前のことが心配だと。だけれどもそれに対して俺はなにも返すことが出来なかった。自分のことで一杯一杯で。
 
 いつだって俺は自分のことで一杯一杯。他人の優しさに甘えて、それを利用することしか考えてなくて、自分からは何も与えようとしなかった。どこにでもいると思う一人でイライラして場の空気を悪くてしてしまう人、それが俺だ。
 
 だけれども、一生あの友人に、自分のことを気にかけてくれた友人に会えないと思ったら、なんでだろうか、元気でやっていて欲しいと微かにおもうことが出来た 。偶然に街で会うことがなければ多分会うこはないけれどどうしてか生きていて欲しいと思うことが出来た。