いつもどこかに逃げ出したかった

 なんだか気が滅入ることばかり書いて、それを読みなおして気が滅入り、そしてまたそれを肴に文章を書く負のスパイラルが続く。俺は自身の内面を占めるゴミくずを文章と吐き出して、すっきりするのもつかの間、何を思っているのかそこにダイブしてしまって、なんて世界は汚いんだと叫んでる阿呆である。


 そんな阿呆な俺は阿呆だからこそ仕事で大きな失敗をしてしまって、ああなんて阿呆だんだとひとりごちした昨日の夜、あの、ここから逃げ出したいという衝動が全身に走ってどうしようもなかった。
 
 自分で選んだ道のはずなのに、いつの間にか、したくないことばかりが俺の周りにあって、したくない、やる気がないからミスが増え、更にやる気がなくなる負のスパイラル。ミス製造機の一人永久機関。そして全てを捨てて逃げ出したいという感情にしっかりと捉えられてしまっている。
 
 俺の人生思えばいつもそうだった。なんというか、やりたいことがやりたくなくなっていく、魅力あったものが魅力を失っていく、いつもそうだった。そして全てを捨ててやり直す。その繰り返し。いつまでこんなことを続けるのか。いつまで逃げ続けるのだろうか、俺は。
 
 そんな疑問も、今日をなんとかやり過ごすためには見て見ぬふりをしないといけない。なるべく視界に入らないように、自分が今日、明日、食っていけるように、目をつむり、なんとか耳をふさいでいなくてはいけない。まだ野垂れ死にたくはない、生きてる意味がわからなくても。またどこかに逃げ出してしまうことになったとしても。
 

この草木と、気候と、暑気と、蚊群の中では、人間も、歳月も、品物も、みるみるうちに消え失せる。なにもかも同じ運命。やりきれないほどだ。片っぱしから、日光に消滅し、光線と色彩の奔流のなかにとろけさる、匂いも時間も、なにもかも同じ運命。空中にはきらめく苦悶しかなかった。

セリーヌ『夜の果てへの旅』中公文庫