若松孝二監督『17歳の風景』~俺の思い出せない頃

 恥ずかしながらこれが初の若松監督作品である。
 
17歳の風景 [DVD]

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 金属バットで母親を殴り、自転車で北へ北へと逃げる17歳の少年の旅路
軽快にリズムよく自転車をこぐ少年の姿と、無表情に凍った顔立ちに、彼の中で沸き起こっては消える複雑な心境をみたような気がした。
 
 そして思う17歳というのはこんなにも複雑で繊細な時期だったろうか。
 
 俺の頃は・・・
 そんなことを思ってみたけれど、当時の俺の心の中はほとんど思い出せない。
17歳、俺は家から少し離れた高校に通い、毎日授業に出ては夕方家に帰る。そんな生活を送っていた。特に反抗期というわけではなく、モヤモヤとした理不尽な感情もなく、ただ日々を普通に生活していたようにおもう。何の変哲もない日常が目の前にズラッと並んでいた。
 
 だけどそんな普通は普通じゃないということもわかっていた。
世間では17歳といえば反抗期で理不尽に人に楯突くようなそういう時期。そしてそんな同世代が多いこともよく知っていた。おれには全くそういうことがなかった。そういう内から湧き上がる理不尽さというものが。イライラして何かに反抗したいという衝動なんて全くなかった。
 
 そのせいか、人に楯突くということを知らないままいい年した人間になってしまって何言われても、何されても我慢してしまう奴隷根性が染み付いてしまった。勿論そのせいだけじゃないだろうけど。
 
おまえたちはどうしていつもそんなに群れているんだ
 
そして今、どうしてか少し少年に共感する部分がある。
遅れてきた反抗期か。それとも今、理不尽な境遇に置かれ、そのことをどうしようもなく思う自分を重ねあわせているだけなのか。
 
特典映像で若松監督が言った言葉「頭のなかで想像するのは自由だ」がとても説得的で印象的だった。